本レビュー:「銀座ウエストのひみつ」

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銀座に本店を構える洋菓子店「銀座ウエスト」

華やかな百貨店のお菓子売り場の中で、一際シンプルな店構えが逆に印象的で、試しに買ってみたら感動的に美味しかったことをよく覚えています。お気に入りはヴィクトリアとパルミエ。

昔から変わらないお菓子のようで、実はカスタマーニーズに寄り添いながら「いつものあれ」を提供し続けている銀座ウエストの秘密。この本を読んだら、きっとウエストが好きになる、そんな一冊でした。

本の概要

木村衣有子さんが2014年に出された著書です。食文化探究と飲食書評をメインに書かれている方で、タイトルを見る限り着目点が大変面白くて、相性が良さそうな予感。文章がやさしくて、そこも好きポイント。

銀座ウエストの中の人ではないので、ファン目線と文筆家目線が混じっているのも特徴です。構成はとってもシンプルで、実店舗や喫茶店について・看板商品について・銀座にお店を構えるにいたった経緯と歴史という流れ。銀座ウエストを支えている人のインタビューにもかなり紙面を割いていて、それがまた優しい気持ちにしてくれて、心地良い本でした。

興味ある方はこちら↓

印象的な箇所

銀座ウエストの創業者は、さぞ寡黙て質実剛健な人なのかと思いきや、なかなかの野心家だったようです。劇場「オデオン座」をオープンさせたり、パチンコ屋にも手を出して、倒産しかけた歴史も。

「たかが喫茶店の親父などで一生を終わりたくない、などと思い上がっていろいろやってみたが、”たかが喫茶店の親父”をしっかりやり抜くことがいかにたいへんで、また大切なことか、身に染みてわかった」p. 164

多分、こうした経験が今の銀座ウエストの基礎となっているのだと思います。少なくとも社是の「真摯」は先代の人生経験が反映されていることは間違いないでしょう。

どこで読んだか覚えていないのですが、何でも思いついたら実行して、失敗も経て、要らないものを削ぎ落としていくと必要なもの、その人にとっての真理が残る、と似ているのかもしれません。

また、オーナーに求められることについては・・・

「中小企業のオーナーにとって、最も大切なことはなんだと思う?」龍一さんの脳裏には、謙虚さ、努力、勤勉、などの言葉が浮かんだ。そのうちのひとつ「誠実さ」と答えたが、友一さんは、違う、と言う。「もっと大切なことがあるでしょう。それはね、生きていること。」p. 169

※龍一さんが2代目であり、現社長。友一さんが先代であり、創業者。

すごくシンプルだけど、これもまた真実だなあと思った次第。もちろん、オーナーがどういう人なのかにも寄るとは思いますが、中小企業って一種のファミリーだから、トップが生きててくれるだけで、それだけで良いというのはなんとなくわかるのです。少し違うけど、おばあちゃんが元気で笑ってくれるだけで良いと思えるような、そういう気持ちってあるんじゃないかなぁ・・・。

そして、銀座のお店が火事で半分以上焼失してしまって、営業再開直後のエピソード。

お客さんへのお礼のつもりで、再開からの3日間、喫茶室のメニューは全て無料にした。龍一さんは4日目からは通常営業に戻すつもりでいたものの、友一さんは一週間続けるようにと言う。そのときの友一さんの言葉「お客様は差し上げたぶん、いつか必ず返して下さる。あげっぱなしではないんだよ」を龍一さんはずっと忘れていない。p.171

自分のところの来てくれる人を徹底的に信じているところが、ファンとして嬉しい。だからこそ、値段に縛られない考え方も成立するのかもしれません。材料の原価が高くなったら、その分お値段に乗せざるを得ない場合は仕方ないというのも誠実ですよね。

ドライケーキという名前の由来

クッキーではなく、ドライケーキという名前はウエスト以外ではみかけません。実は、これ、先代の友一さんがキャッチーな和製英語がいいなぁと適当につけちゃったらしい(笑)

もともと60年代の都市開発の一環で工事が多く、お店に来てくれる人の数が減り、ならばお土産になるものを作ろうと始まったのだそうです。だから、”ケーキ”のような特別なもので、なおかつ持ち運びもしやすくて、日持ちする乾き物(”ドライ”)という組み合わせになったのかもしれませんね?

ファンへの配慮を感じるところ

ウエストはクッキーの詰め合わせにしては珍しく、スチール缶ではなく、紙の箱に入っています。経費削減が理由なわけではない。(あ、でも、喫茶店のテーブルは安価なものだそうですよ)なんと、その理由というのがスチール缶に入っている方が輸送中壊れやすいからだそう!それでもスチール缶の防湿性に頼らざるを得なかったのが、包装フィルムの進歩により依存しなくなったことも大きいそうです。そして、重量の問題。紙の方が断然軽い。

最近、個別包装をやめるべきだと署名活動を始め、大手製菓メーカーに高校生が呼びかけたニュースが記憶に新しいですが、私自身は個別包装によって多くの人のQOLが上がったのだろうと想像しているので、課題はあるものの個別包装自体をやめるべきだとは思っていません。ウエストのお菓子にとっても湿気は大敵でしょうし、もらった人も一度に30枚のクッキーを食べることもないでしょうから、やはり、救世主なのだと思います。個別包装のおかげで自分のペースで楽しみきることができる。それが、また、頼れるギフト・東京土産に求められることのひとつなのだと思います。

最後に

この本は、ウエストが好きな人による、ウエストが好きな人に向けたラブレターのようでもありました。次にドライケーキをみかけた時はいろんな話を思い出すことになりそうです。銀座ウエストファンなら楽しめるはず!

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