本レビュー「あやうく一生懸命生きるところだった」

書店で表紙の色に一目惚れして以来、ずっと気になっていた本。読んでいるうちに肩の力が抜けて、じんわり心がほぐれていくような、優しいエッセイでした。イラストがちょっとシュールでつい笑っちゃう。さくっと読めるところも魅力。

作者について

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訳者:岡崎暢子
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2020/01/17

表紙の絵も作者のハ・ワンさんが描いているらしい!それにしても、プロフィールが個性的で何回も読んでしまった。最近韓国の女性作家(チョ・ナムジュ著「82年生まれ、キム・ジヨン」など)がかなり注目されているのもあってか、この本も女性作家かと勝手に勘違いしていたのは内緒です(笑)

【文・イラスト】ハ・ワン
イラストレーター、作家。1ウォンでも多く稼ぎたいと、会社勤めとイラストレーターのダブルワークに奔走していたある日、「こんなに一生懸命生きているのに、自分の人生はなんでこうも冴えないんだ」と、やりきれない気持ちが限界に達し、40歳を目前にして何のプランもないまま会社を辞める。こうしてフリーのイラストレーターとなったが、仕事のオファーはなく、さらには絵を描くこと自体それほど好きでもないという決定的な事実に気づく。以降、ごろごろしてはビールを飲むことだけが日課になった。特技は、言い訳つけて仕事を断ること、貯金の食い潰し、昼ビール堪能、などがある。書籍へのイラスト提供や、自作の絵本も1冊あるが、詳細は公表していない。

公式プロフィールより

これは、自分のことなのでは・・・?!

韓国の友人らが勉強はもちろん、ボランティアも、自分磨きも、オシャレもどれひとつ気を抜かずに頑張っている姿を見て、競争原理がこれほどまでに強く働いている社会なのかと衝撃を受けた留学時代。それから数年後、日本住み始めてから感じたのは、東京は隙間時間がどんどん埋まっていく街だなぁということ。ふたつの国は全然違うところもあるけど、似てるところもある、と思う。

何もしないって意外と難しい。

自分が時間を欲しがっていた理由は、何かをしたいからではなく、何もしたくなかったからではないか。p.102

朝活もそうだし、いろんな資格を取ったり、休日も家でゴロゴロしないで綺麗にお化粧をして、お題のスポットへおでかけしたり、ご飯を食べたり・・・いつもいつもではないにせよ、余暇の過ごし方がとってもゴージャス。これはこれで好き。

でも、ベルリンの公園でお弁当を持ってピクニックする時間や、閉まっているお店のショーウィンドーを眺めるだけの時間も大好きだったし、せっかく湖に水着を用意して来てるのに泳がないとか、矛盾してることをする休日もいい。好きなだけ寝て、漫画読んでごろにゃぁ〜と過ごす休日で心が満タンっていうのが必要な時もある。104ページのイラスト、私だー!と超共感しました(笑)(興味のある方はコチラに掲載されてました。)

あ、それ、私です。

僕のような人間は、一つ終わらせて、やっと次が見えてくる、そういうタイプなのだ。p.161

同じことを思った人はきっとたくさんいる。私もあれこれもがいてみないと前に進めないところがあるから、わかったことは、ゆっくり急ぐしかないということ。

マイペースでいいのだ

「みんなより7年若い人生を送っている」と言うこともある。後れを取った分、若い人生。遅れているのは決して悪いことばかりじゃない。必ずしも、みんなとスピードを合わせる必要はない。(…) 人はそれぞれ、その人なりの速度を持っている。自分の速度を捨てて他人と合わせようとするから、つらくなるのだ。p.205

とってもユニークでいいなぁと思った表現。私がラジオパーソナリティーとしてデビューしたのが31歳。つまり10年近く若い人生を送っている計算になる。実際の年齢の割に経験が浅くて落ち込むこともあるし、人一倍努力をしなくてはならないことはあるけど、実質的には社会人3年目だからそんなもんでしょと自分への過剰な期待を健全な意味で取り払えば、前向きになれる。

いつも人の背中ばかり追いかけてるけど、小学校一年生の運動会でスタートの合図が分からず、走り出せなかったくらいだから、そもそも速いわけがない(笑)でも、私の良いところは最後まで走り切るところ。それでいいのだ。

冷たい現実にも温かみを感じさせる言葉

いうなれば、そうでない側の僕らの人生は、”カニ”の代わりにあてがわれた”カニかまぼこ”みたいなものだ。期待していたレベルにはとうてい満たないカニかまぼこを前に、僕らは思い悩む。ある者はカニかまぼこをカニにしようと努力し、またある者は我慢できずカニかまぼこを食べる。またある者は、こんなはずないとカニかまぼこさえも無視してしまう。p.214-215

「理想通りじゃない現状を愛する」と題された一節の文章。人生をカニカマに例えるなんてユニークすぎて気が抜けちゃう。一冊全体に通じることだけど、努力したって報われれるとは限らないとか、やりたいことなんて探したって見つかるものじゃないなんて、厳しくてひんやりした無慈悲な現実の話をしているはずなのに、なぜか、ふふっと笑ってしまう。それがこのエッセイの魔法なのかもしれない。ゆるい、とはまた違うジャンル。そこが良い。

さいごに

独特の世界観に入り込んで、気が付いたら一気に読み終えてしまいました。2時間ちょっとで読めるので、ライトな読書にもおすすめです。決して「あなたは、あなたのままで良いのよ」と甘い言葉で慰めてくれるような本ではありませんが、頑張ってるのになかなか成果が出ないなぁ〜ともやもやしている人には、ちょっとプレッシャーを感じるビジネス本の間に箸休め的な一冊として手に取っても良いかもしれません。自分はすぐには変わらないけど、物事の捉えら方ならちょっとは変えられそうでしょう?逆に絶好調!な人にはあまり刺さらないかも。

また、今まではこの手のエッセイは女性が(意図してかは別にしても女性に向けて)書いたものが主流でしたが、男性著者が書いているので視点が少し違うのも面白かったです。(先述の通り、女性著者だと勝手に思い込んでいたので、なんかしっくりこないなぁと感じたのです。笑)また新しいエッセイ「今日も言い訳しながら生きてます」がもうすぐ出るみたいです。韓国語でも読んでみたいなぁ。

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インタビュー記事など

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