ご存知の通り、ドイツ語の名詞には三つの性があります。男性名詞、女性名詞、中性名詞。「1つの名詞につき1つの性別」が基本なのですが、中には性別が途中で変わったもの、厳密に言えばふたつの性別を持つものもあります。
例えば、「ブログ」を意味する「Blog」という言葉。ドイツの広辞苑的な位置付けのDudenでも「Blog, das oder der」とあります。
その他だと「メール」を意味する「E-Mail」は「E-Mail, die oder das」です。
ドイツ語の性別の覚え方のコツは無いような、あるような、でも覚えるしかないよねって感じなのですが(私も結構曖昧に覚えているので自信がない時はいちいち調べます。)、殊に外来語に関してはドイツ人同士でも意見が一致しないことがよくあります。みんな感覚で覚えているので、私からすると腑に落ちない理由で性別が変わりつつあるものもあります。その代表例が「Blog」です。逆に納得ケースは「E-Mail」です。
根源主義だけど、分類できない時は中性
まず、ドイツ語の外来語の扱いに関して次のような基本ルールがあります。(意外と奥の深いテーマなので細かい例外などは割愛しますが、これだけでも覚えておくと迷った時の道標にはなります。)
元の言語にも性別があれば、それを尊重することが多いが、
そうでない場合は中性名詞になることが多い。
具体的に言うと、フランス語やイタリア語には性別があるので、そのまま性別ごと受け入れますが、英語のように性別を持たない場合は中性になるということです。最近ではIT用語が多く入ってきますが、大体英語圏で生まれたものなので中性になります。
つまり、「Blog」も「E-Mail」も元々中性でドイツ語界に入ってきたのです。
ドイツ語に馴染むと性別が見直される外来語たち
それが何故変わるのか?そのメカニズムとは・・・
外来語として入ってきた新参者たちに世間が慣れて来ると、新聞などにも登場し始めます。そうして、すっかりドイツ語ファミリーの一員になると、ドイツ人の脳内ではタグ付けが始まります。これがどういう意味かと言うと、「得体の知れない何か」から「自分の生活と関連付けられるもの」に変わるということであり、「なんとなくdas Blogは違う気がする」「なんとなくdas E-Mailは違う気がする」という気持ちが芽生えてくるのです。
分かりやすいので、E-Mailから説明します。
E-Mailはドイツ語に直訳すると「elektronische Post」で、Postは女性名詞です。また、メッセージは「die Nachricht」というのですが、こちらも女性名詞です。ですので、女性であるのが自然なはずなのに中性なんて変なの・・・と思い始めて、いつからか、「die E-Mail」「die Mail」が主流になりました。だから、Dudenでも両方の性別が認められています。
それで、Blogはというと・・・
実は意見が分かれています(笑)
私も、感覚的にいうと「der Blog」の方がしっくりくるような気がします。一般的に理由としてよく言われていながら誤解とされているのが、「der Block」に因んで男性名詞になったという説です。私もそうだと信じていました。Blockはブロックという意味でなのですが、Schreibblockにするとメモパッドという意味があります。音は確かに似ていますが、Blogはwebとlogを掛け合わせて、さらに略した言葉なので、論理的に考えるならば「log」を直訳するべきなんです。
http://www.scilogs.de/sprachlog/das-blog-ist-tot-es-lebe-der-blog/
ここのサイトがとても参考になったので貼っておきます。(ドイツ語)
logは「das Log」や「das Tagebuch」という意味を持っていますが、いずれも中性名詞です。なので、「das Blog」が正しいとする人も少なからずいます。Dudenが先にdasを出している理由もそこにあると推測しています。でも、音の響きであったり、感覚からすると「der Blog」の方がしっくりくるというのも分からないでもないのです。そもそもドイツ語名詞の性別に根拠がないようなものですから^^;
しかし、それにしても時代と共に変わるってところが面白くないですか?
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